話題のベストセラー、橘玲さんの「幸福の『資本』論」を読んだので、印象に残った部分を要約してメモします。
ゲーリー・ベッカーの人的資本理論では投資家が金融資本を金融市場に投資して利益を得るのと同じように、労働者は自らの人的資本を労働市場に投資して収入を得ていると考える。
金融取引のルールはシンプルで、
- 利益は大きければ大きいほどいい
- 同じ利益ならリスクの小さい方がいい
これに対応するように人的資本の投資(仕事、労働)にもルールがある。
- 収入は多ければ多いほどいい。
- 同じ収入なら安定していた方がいい。
しかし、人的資本の投資には金融取引にはない特徴的な次のルールがある。
- 同じ収入なら(あるいは収入が少なくても)自己実現できる仕事がいい。
もし金融取引と同じ原理が労働市場にもはたらいているとすれば、ハーバードビジネススクールでMBAを取得した卒業生は真っ先に風俗産業を始めるはず。
なぜ彼らは、目の前に転がっている「儲かる機会」を無視して、きわめて競争の激しいウォール街を目指すのか。その理由はわざわざ説明する必要もないが、風俗業は汚れ仕事とみなされているため、その分野で成功しても自己実現*できないからだ。
※自己実現:かけがえない自分になること。マズロー「欲求の五段階説」では4つのレベルの欲求が全て満たされたのちに現れるとされる。ヒトは社会的な生き物であるため、自己実現は共同体=社会資本と密接に関係する。